使わない方がいい「ふたつのウソ」
ウソといっても子供のつくウソのはなしではありません。
大人自身が子育てする中で無意識、無自覚のうちについているウソがふたつあります。
とても多くの人が気づかずに、もしくはよかれと思って、それをウソであると認識しないままに使ってしまいます。
そしてそれは多くの場合、まわりまわって子育てを大変なものにしたり、子供の姿を難しいものにしてしまいます。
僕は今後メルマガでいろんな子育てに関わるおはなしをお届けしていきますが、先にどうしてもこのふたつのウソについての視点を持っておいてほしいと思うのです。ここを多少なりとも知らないとどんな情報も裏目にでてしまいかねないからです。
では、まずひとつめのウソについてみていきましょう。
◆子供を動かすために使われるウソ(コントロールのウソ)
「はやくこないとおいていくよ」
「~~しないとジュース買ってあげない」
「~~しないとオニがくるよ」
「○○ちゃんが来てっていってたよ」(実際はその事実はない。誘導のためのウソ)
一般にこうした関わりが少なからず使われています。
おそらくこれを使う人は、ウソをついているという自覚はしていないことでしょう。
こうした関わりがあまりにこの社会にはありふれていて、子育ての「当たり前」にすらなっています。
しかしあらためてみると、これらはかなり強い言葉であるとが感じられるのではないでしょうか。
一番上の「はやくこないとおいていく」に相当することを大人の社会で使った場合それはパワハラ(パワーハラスメント)になることでしょう。
例えば、「今月のノルマ達成しなかったらおまえの席はないと思え」のように。
子供は大人の保護がなければ1日すら生存がおびやかされてしまうほどか弱い存在です。その子供に向かって、「おいていく」=「保護を剥奪(はくだつ)する」という言葉はとても強いおどしの言葉になっています。
また、それはおどしであるだけでなく、「存在の否定」という自尊心をおびやかす関わりにもなっています。
にも関わらず、こうした関わりがあまりに一般的であるために多くの人はその問題点に気づかないまま無自覚に使ってしまいます。
これらは相手を支配、コントロールするためのウソになっています。
すこし視野を広げて考えてみましょう。
そのとき、そこにある事実はなんでしょう?
いろいろあるでしょうけど、
・急いでいる
・そこには危険がある
・大人の側にそれにつきあう余裕がない
このあたりが多いでしょうか。
子供を短絡的に動かすのではなく、こうした事実を適切に伝えてみたらどうでしょう。
例えば、
「私は急いでいます。寄り道しないで来て下さい」
「会社に遅刻してしまいます。遊ばずにいきましょう」
「電車に乗り遅れてしまいます。一緒に来て下さい」
「そこは自転車が走ってくるので危ないです。こっちに来て下さい」
「そこは落ちてしまいそうで怖いです。そこで遊ぶのはやめましょう」
「私は疲れています。早く帰りたいのでいまは遊びません」
「いま遊んでいるとご飯をつくるのが遅くなってしまいます。もう行きます」
一例にすぎませんが、これらは事実に即したアプローチになっています。
この事実から出発したアプローチには、子供自身に考えさせ成長させるプロセスが隠れています。
・急いでいる、疲れているといった他者の心情を考えるプロセス
・安全や危険について理解し考えるプロセス
これらがあるので、ゆっくりとですが子供はそれを踏まえて成長していくことができます。
子供をとにかく動かすだけのおどしや釣りなどのアプローチではその部分はありませんね。
ここにもうひとつ大切なポイントがあるのでそれにも触れておきましょう。
「そこに危険がある」とか「そこは衛生的でない」というのは物理的な事実ですね。これは「事実」として理解しやすいところでしょう。
しかし、それらと違う「事実」が上の例の中で出ていますね。
それは、「急いでいる」「疲れている」といったものです。
これは「感情の事実」「私の事実」です。
子育てする人はここを軽視しなくていいのです。
むしろここがすごく大切です。
これはもうひとつのウソにも通じることなので、そちらの方で詳しく見ていきましょう。
◆私が私につくウソ
ふたつのウソのもうひとつは、子育てする大人が自分で自分につくウソです。